2007年03月02日

プリム今昔

紀元前470年頃の話です。
場所は、アケメネス朝ペルシャ帝国。
当時のペルシャは、今のインド、イラク、トルコ、エジプト、エチオピアに至るまで征服するほどの巨大な帝国でした。
エルサレムは、遡ること紀元前586年、バビロニアに滅ぼされ、ユダヤ人は捕囚(強制集団移住)させられましたが、バビロニアがペルシャに滅ぼされた後も、エルサレムに帰らずそのままその土地に根付いて生活するもユダヤ人もいて、ペルシャ帝国は彼らに居住権を与えました。

さて、それから1世紀経過。ユダヤ人は真面目で頭がいいため、商売で成功するものや、国の要職に就く者も現れました。
ユダヤ人モルデハイの従妹エステルは、その聡明さと美貌で、ペルシア王クセルクセス1世のお妃となりました。しかし、エステルは、自分がユダヤ人であることを王様には隠していました。

ある日、従兄であり養父のモルデハイが、ペルシャの大臣ハマンへの敬礼を拒否する事件が起き、元から文化風習が全く異なるユダヤ人が大嫌いだった大臣ハマンは、ペルシャのユダヤ人全員の殺害を企てたのです。

「俺はユダヤ人が大嫌いだ。俺の力でこの国の全ユダヤ人を抹殺してしまおう。奴らの抹殺日は、このクジ(プル)で決めるぞ」

モルデハイは驚いて、王妃エステルに告げました。

「ユダヤ人であることを隠して王様に嫁げといったのは、他でもないこの私だ。しかし、今、ペルシャ全土のユダヤ人の命が危ないのだ」

エステルは決死の覚悟で、夫であるクセルクセス王に自分がユダヤ人であることを告白し、ハマンが企てた恐ろしい計画を伝えました。

元からユダヤ人には寛大であった王様は、王の自分を差し置いて勝手な嘘八百を並べ、ユダヤ人虐殺を企てたハマンを処刑しました。
また王様は、以前「大臣2人による王の暗殺計画」をエステルが事前に察知してクーデターを防いだ一件も、実はモルデハイがエステルに告げたことだったとも知りました。
こういったことからモルデハイは、悪行三昧のハマンに敬礼しなかったのです。
モルデハイの忠誠心に感動した王様は、彼を大臣にしました。

めでたしめでたし。


・・・というのが、週明けから始まる「プリム」のお祭りの由来です。

「プル」とはクジの意味で、プリムはその複数形。
プリムの話には、「神」が出てきませんが、それは宗教を重んじ伝統を守るユダヤ人の結束の強さがその表れだ、という解釈をするとか。

エステル、モルデハイというのはユダヤ名ではなくペルシャ名。エステルはイシュタール神(アッカド語)、モルデハイはマルドゥク神で、その神話はシュメールにまで遡ります。シュメールってのはほら、楔形文字のあの文明の王朝です。
でも、エステルもモルデハイも、イスラエルではとても一般的な名前です。とはいえ、若い世代はあまり見かけませんが・・・。いい名前なんですけど。

オリエント古代史、大好きなものですから、
語らせたら、相手が立ち去るまで延々と語ります。
ヒエログリフと楔形文字、勉強したことがあります。
そんなヒマがあったら、英語でもやりゃよかったのに・・・。
よく「イスラエルに興味を持ったキッカケは?」と聞かれます。
死んだ古代語より、復活した古代語の方が面白そうだったから。


古代史はともかくとして。

「ユダヤ人であることを隠していた」という故事が転じて、現代のプリムでは、仮装行列や仮装パーティーを催します。
また、「王様とエステル王妃とハマンが酒宴を開き、その席でハマンのユダヤ人滅亡作戦がばれた」ということから、グダグダになるまで酔っぱらう、・・・というのが、プリムの正しい過ごし方です。


さて。
先日、新聞のサイトでこんなコラムを読みました。

古代も現代もプリムと同じだ。現代イRンの大統領がユダヤ人全滅を企てても、われわれユダヤ人は決して滅びることがない。

なるほどね。


イRンの大統領は、イスラエルやユダヤ人が心の底からお嫌いなようで、“ユダヤ人大虐殺を考察する会議”なんかも主催しています。

余談ですが、その会議にイスラエルに反対する稀少のユダヤ人宗教者が参加します。彼らにとっては、「神によってイスラエルは建国されるべきであり、人間の手で建国された現代のイスラエルは、イスラエルではない」、というのが信条のようです。

「ユダヤ人らしからぬ!」と国内外から怒りの声が殺到ですが、まぁ考えようによっては仕方ないのでは? なんて、大和民族の私が言う事ではないけど。

たとえば、次元は違いますが、幕末ニッポン。
新撰組やら尊皇攘夷やら薩長やら白虎隊の時代ですよ。
日本は武士の国であるっ!という武士道一直線の人達は、コメリカやエゲレスが続々と入り、刀を捨てて西洋文化をどんどん取り入れる輩にガマンならなかった。
もし箱館五稜郭本営に篭城する新撰組副長土方歳三らに対して、新政府が、
「お前達、そんなに武士を続けたいなら、新政府に謀反さえ起こさなければ五稜郭をやるから、その中で勝手に武士道をやってれば?」
ってことになったとする。
それから現代に至るまで、北海道の一角に武士道を貫く人達がいたとしたら? 
武士道な彼らには、現代ジャパ〜ン!なんて受け入れられず、対日感情がよろしくない国々と組んで、現政府を滅ぼして武士道日本の復活を企ててもおかしくないわけです。
ね、分かりやすいでしょ? 
って、すっごく勝手な持論。
サラリと流してください。
幕末史も大好きなんです。


ますます話題が遠のいてきましたが。

まぁ、宗教的なことはともかく、現代社会においては、ユダヤ人が滅ぼされることはないでしょう。世界に散らばっていますので、全部を滅ぼすのは不可能です。
第一、イスラエル在住のユダヤ人よりも、世界各国に住んでいるユダヤ人の方が、圧倒的に多いんですからね。


プリムには、ハマンの耳(オズネイ・ハマン)というお菓子を食べます。

オズネイ・ハマン

ハマンの耳の由来は、こちら

今夜はプリムの前倒しパーティーで、近所がうるさくなることが予想されます。

それから、プリムは祝日ではありません。
 
posted by Heshbonit at 17:00| イ国の言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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