2006年09月08日

冷風扇(マツネン)

ちからくさんの処で話題になっていた、『冷風扇』

中東ならでは・・・のコレ、もちろんイスラエルにも存在します。

外部の三面にパネルがあり、

マツネン外部

箱内部のモーターが外気を取り込んで、室内に冷風を送り込みます。

マツネン室内側


こんな風に屋根に設置していた時代もありました(今は使われていない)。

屋根に設置して室内に冷気を送り込む方式

昔は各家庭でも使われていましたが、今では普通のエアコンに取って代わりました。


原理は簡単。
電源を入れると、箱の中の小さなポンプが水を汲み上げて、三面のパネルの上部に点滴状に水をしみ込ませます。それと同時に内部のモーターが外気を取り入れて、涼しい風を室内に送り込みます。
底部には、水深を調整する浮きのようなものが付いていて、水が少なくなったら自動的に水を取り込んだり、水を排水する仕掛けが出来ています。(水源につないでおく必要があります)。

中東ならでは・・・、というのは、大気が乾燥した中東においては、エアコンのように閉鎖した室内の湿気を取って冷風を送り込むよりも、湿った冷たい風を室内に送り込むほうが適しているからです。
風を送るだけですから、使用中にドアや窓を閉める必要もないし、工場・作業所など広い場所で使うこともできます。

イスラエルでは、現在では作業所などでしか使われておらず(一般家庭で未だに使っているところは稀少だと思います)、うちの村が冷水式クーラー自体を何十年も前に購入した会社は、需要がないため製造中止したそうで、新しいマツネンはどこで手に入るのか・・・。
もちろん、中のモーターを修理すれば使い続けることは出来、ご覧のように、外部はサビだらけでも、パーツさえ交換すれば使えます。

イスラエルで廃れた理由は、イスラエルで湿度が低い地域というのが南部・北部・山間部だけで、人口が集中している沿岸部は夏の湿度が70%以上。湿った風を送り込む中東式クーラーが全く適さないから需要が減った、というのが1つ。


そして、メンテナンス代。
外部の3面のパネルの内側には、木屑を固めたようなマットが入っていて、このマットに水が滲みこむ仕掛けになっています。

マツネンのパネル

なんたって、木屑を固めたマットですから寿命が来ます。大体、2〜3年に1度は替えなければならないのですが、これが3枚1セットで5千円くらい。
内部の水をくみ上げるポンプ(7500円)や、水のレベルを測る浮き(1500円)は、水の石灰分が付着してしまうため、やはり3〜5年で交換が必要です。モーターに付いているベルト(2千円)も消耗品です。
これらを交換する修理代も併せて考えると、2〜3年に1度は2万円超の出費があるということになります。
それだったら一般家庭ならエアコンを買った方が安いし、工場などでも大きな扇風機などを使うほうがいい、ということになるわけです。

あと、音がうるさいんですよ。好まれない理由の1つじゃないかと。


詳しいでしょ? 
だって、これの修理、ボスの仕事ですから。
今、うちの村で現役で使っているのは、上の写真を撮った自動車整備所だけです。


ちなみに、中東諸国(ヨルダン、シリア、レバノン)でも存在するそうです。おそらく、イランにあるのも同じタイプだと思います。たぶん、一般人は気が付かないだけじゃないかと。


この原理は、実は、中東では古くから使われています。
中世以降、中東の上流階級の建物の窓には、『マシュラビーヤ』という装飾が施された木やテラコッタの扉が付けられるようになりました。
一般的には、「暑い日ざしを室内に入れないため、且つ、ご婦人方を外に見せないため」と説明されていますが、忘れてはならない大切な目的があります。

この飾り窓の内側に、水を入れた容器を置いておきます。



すると、外から入ってくる風が、蒸発する水を通って、涼しい風となって室内へ。
つまり、「中東ならでは…」の冷水式クーラーは、中東の古来からの伝統を具現化したものなのです。

アラビア語で、マシュラビーヤとは「飲む場所」。
古来はこの飾り窓がある所が休息所だったのか、それとも水を入れた容器を置くことを示したのか・・・。
ちなみに、この言葉の語幹『ShRB(飲む)』の派生語として、シャーベット(ソルベ)なんていう言葉もあります。
・・・んなことは、誰も聞いてない。今日は冷水式クーラーの話。



ちからくさん、こんな感じでいいでしょうか?
     
posted by Heshbonit at 13:00| Comment(6) | イ国情緒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Heshさん、どうもどうも。レポートありがとうございました。
おもしろい!はじめて見ましたよ、これ。
イスラエルにもあるんですねえ。

もうひとつ、はっと気がつきましたが、そういえば、地中海側は蒸しますね。
エルサレムだと蒸すのむの字も感じませんが。(笑)
Posted by ちからく at 2006年09月08日 20:56
◎ちからくさん
どういたしまして。
たぶん、普通に生活していたらまず気が付かないと思います。エルサレムでも、古い工場などでは使っているのではないでしょうか。木屑マットやポンプを売る会社(@ホロン)は今でもやっていますから。

エルサレムも乾燥するんですね。そりゃ北部の私の村よりも高い所にあるから当たり前ですよね。
ちなみに、うちの村は高原に挟まれた盆地なので、湿度が上がることがあります(それでも50%程度ですが)。
Posted by Hesh at 2006年09月08日 22:54
なんと、この冷水式クーラー私の部屋に有りました。
もう45年くらい前の日本ですが・・・。
これ、かなり水が要るんですよね(貯水式ではなかったような・・・・)勿論自分で、メンテはした事が無かったので、どうなっていたのかは分かりませんが・・・。
洗濯機が、絞り機(洗濯物をはさんで回す式)付きの時代です。
おお、懐かしい。
Posted by 華 at 2006年09月09日 08:28
◎華さん
うちにも窓のところに縦型のクーラーがあったような気がぼんやりとしています。ただそれがそういうモノだと理解していませんでしたが。
洗濯機の絞り機付き…。アレのほうがキレイに絞れるんじゃないかと思うことがあります。少なくとも一枚ずつだから絡まないし。
Posted by Hesh at 2006年09月09日 13:35
毎回ながら、見事な解説にうなってしまいました。しかもそれがアラブ式飾り扉にまで発展するなんて。経理だけじゃなく、どうしてこういうことまでご存知なんですか。heshbonitさん、頭よすぎです。
Posted by Noah at 2006年09月09日 19:11
◎Noahさん
いえいえ、うなられても…。
なんか雑学みたいのが広く浅く大好きなだけです。薄っぺらいですから、専門の方と話したら10秒で化けの皮がはがれます。
Posted by hesh at 2006年09月10日 01:12
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