2006年06月25日

シリアの花嫁(完全ネタバレ)

出勤。

今月はどうしたんでしょ、そんなに忙しくないんですよ。
ただダラダラと人が来て、小さなことをコマゴマと頼んできて、「あー、これは時間がかかるかも」なんて思っていると、案外あっさりと解決したり。
慣れてきた? のかもしれません。
やっぱ給料計算の仕事を引き受けろということでしょうか。
その前にコースに通わなくてはならないんですが、ちっとも始まりません。今日も催促電話をかけてみたけど(どうせ今週会計士が来て「学校はどうした?」といわれるに決まっているから)、「まだ集まらなくてねー。誰か友達でもいないの?」と、勧誘せよといわんばかりのことを言われました。

指はほぼ回復しました。
まだ引き攣る感覚はあるにしても、指のヤケドの回復というのはワリと早いものですね。お騒がせしました。


さて。
昨夜、「シリアの花嫁(Syrian Bride)」という映画をTVでやっていました。
昨年ヒットした映画で、イスラエル・ドイツ・フランス合作。
内容としてはとってもよかった。
イスラエルのフィルムで初めて「最後まで見られた映画」です。ま、ドイツとフランスが入っているからかもしれませんが。
それに加えて、この映画の舞台が私が住んでいる地元のようなもので、親近感があったとも言えます。

ストーリーは(ネタバレです)、

ゴラン高原・マジュダルシャムス村に住むドルーズ族の女性モナが、シリアのドルーズ族の男と結婚することに。親同士が決めた縁談で、モナは全く面識がない。
モナは4人兄妹の末っ子。やりたいことがやれなかった姉、イタリアで怪しいビジネスをする兄、シリア経由で旧ソ連に留学してロシア人女医と結婚した弁護士の兄。兄2人は、モナの結婚のためにイスラエルに一時帰国しました。
そして両親だが、穏やかで優しい母とは対照的に、モナの父は政治的理由でイスラエルの警察に常にマークされている。そして父は、ドルーズ族ではない女性と結婚した次男を嫌い、かわいい孫を連れて帰って来たのに終始不機嫌である。
さて、新郎不在で盛大な結婚パーティーを行った後、ウェディングドレスを着たモナとその家族は、一般人通行不可の特別な国境ゲートに向かう。
国連と赤十字職員仲介の下、モナだけがイスラエルを出国してシリアに入国しなければならないが、シリア側の役人が何かと難癖をつけたり、イスラエル側のお役所仕事のために、モナの手続きが進まない。
最後にモナは、ゲートが開いた瞬間にすり抜けてイスラエル側を出て、シリア側に向かう・・・。


・・・どれも実際によく聞く話。
シリア経由で旧ソ連留学に行った人は結構いるし、国境を越えてシリアやレバノンにお嫁に行く(又は、お嫁を貰う)というのも、何も特別なことではありません。

「何ゆえにわざわざ国境を越えて結婚を?」って思います?
昔は日本でもよくあったでしょ。「隣り村から嫁ッコさ貰うべ」って。
血が濃くなりすぎることによる各種弊害を防ぐために、別の地域の者同士で結婚するのです。政治的理由ではありません。
ゴラン高原のドルーズ族は、シリア領・レバノン領・イスラエル領に住んでいますが、彼らはドルーズ族の人間としか結婚しないため(例外あり・この映画でも描かれています)、自分達の村の中だけで相手を探すと近親婚になってしまい、生物学的な問題が生じる可能性が高い。
それゆえに、別の地域に住む血が繋がらない人と結婚することで、危険を回避しなければなりません。

さらに、アラブ社会は自由恋愛があまりなく、女性が一生結婚せずに単身で過ごしたり、結婚せずにシングルマザーになるなんてまず認められません。親が決めた結婚相手と結婚することが彼らのルールと言っても過言ではないでしょう。
ある意味、宗教戒律が厳しい国や身分制度が現存する国では、親が決めた相手と結婚することが常識です。むしろ、「誰とでも結婚していい」ということは、転じて「誰も後ろ盾になってくれる人がいない」と恥ずべきことだったりするのです。封建時代の日本と同じと思えば分かりやすいでしょう。

ドルーズ族の結婚の問題は、この映画のテーマにもなっていますが、隣りの村っていうのが国境をまたいでしまっているため、現時点では、家族とは滅多に会えないことになります。
そしてイスラエル領内に住むドルーズ族の場合、イスラエル国籍を所有していないため、第三国に出国するのはそう簡単ではありません。
現行のイスラエルの入管法では、ゴラン高原のドルーズ族でシリアに出国・イスラエルに再入国できるのは、「留学目的の学生」「ドルーズ族の宗教者」となっています。その他はよほどの理由でもない限り、許可が下りません。

「シリアに嫁いだ女性の里帰りはなぜ認められないのか?」って、ま、「入鉄砲出女」でしょうか。いろいろな弊害を防ぐにはそうするしかありません。例外を作ると際限がなくなります。
これはイスラエルだからとかドルーズだからというのではなく、どの国でも同様。外国人が別の国の滞在権を申請する際、女性のほうが男性よりもはるかに難しく、審査が厳しいですから。

ただし、この映画にあるような「花婿不在のパーティー」や「花嫁1人でドレスを着て国境を越える」ということはありません。
「新婦の親族関係者一同が、赤十字介入の元で特別限定出国という手段で新郎側に集まり、新郎新婦&双方の親族揃っての結婚式をする」そうです。上で「滅多に会えない」と書いたのは、親戚の誰かの同じような結婚式があれば、国境を渡って親兄弟に接する機会はたまにはあるからです。
尤も、花嫁に荷物があるだろうから、体1つで嫁に行かないよね。
ま、そういうツッコミはともかくとして・・・

この映画タイトル、ヘブ語で、「カラー・スリット」 
(語頭には私の大嫌いな定冠詞・が付きます)。
スリット」とは、一躍有名になったあのヘブ語「スリ(Suri)」の女性形です。

ちなみに、婿は、「ハタン」。
日本と同様、舅姑からみても同じ用語を使いますが、他人が「あなたのところのハタン(婿)は・・・」とは言っても、舅姑が「うちのカラー(嫁)が・・・」というような言い方はまずしません。
イスラエルでは、舅姑婿嫁、誰もが名前を呼び捨てにします。

余談ですが、アラ語で花嫁は、「アローサ」。
「シリアの花嫁」→「エラローサ・アッスレーヤ」
(語頭には定冠詞・エルが付くはず・・・)。
かなりのアラ語がヘブ語と似ているんですが、「カラー」と「アローサ」では全く似てませんね。


なんの話でしたっけ?
あ、映画でしたね。
ドイツとフランスの合作だからもあって、映画は非常に丁寧に作られていて、カメラワークや話のテンポもよかった。イスラエルだけに作らせたらこうはいかなかったと思う。
日本でもDVDが出ているらしいです。ヒマな方は探してみてください。

ゴラン高原ドルーズ族の結婚式に一度呼ばれたことがありますが、村人総出で、まぁすごいですよ。

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posted by Heshbonit at 20:00| イ国の言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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