2006年05月20日

マダム・ゴテックス

ゴテックス (Gottex)
イスラエルが誇る水着の一流ブランド。
この会社を作ったのは、レア・ゴットリヴ。
通称、マダム・ゴテックス。
注:ヘブ語で、ゲヴェレット・ゴテックスと呼ばれていますが、
日本語で読みにくいため、ここではマダムにしておきます。

1949年、小さな水着工場からスタートしました。
瞬く間に、斬新(すぎる)デザインと服地開発で爆発的人気となり、あれよあれよとスターダムを駆け上りました。
高級水着として、世界のファッション誌で取り上げられ、海外市場でも高級水着のトップ地位を保っています。
しかし、1997年、ゴテックスは、「アフリカ・イスラエル」という投資開発グループによって買収されました。

昨日の夜、報道ドキュメント番組で、ゴテックスの創始者であるマダム・ゴテックスにインタビューをしていました。
既にゴテックスは彼女の会社ではないため、今年から、第一線から退かされた形になってしまったようです。

マダムは今年でなんと88歳。
これで斬新(すぎる)デザインの水着を開発し続けた女性ですから、それだけでも十分すごい話なんですが。
縫製工場の女工たちも、マダム・ゴテックスを母のように慕っていたものの、最早会社は彼女のものではなく、そしてデザイン開発から外されてしまっていることに寂しさを感じる、と。

発展し続ける企業は、日々大きくなっていきます。
私の知人に、元デザイナーがいます。彼は、イスラエルでも某分野で有名になり、ブランド名と共に彼の顔と名前が広まったりしたのですが、会社が、「売れるうちに売ってしまえ」とその会社のブランド名ごと別の会社に売却することに。彼は思うところがあって、それを機にデザイン業界から身を引きました。
個人で見れば感傷的であっても、世の中ではよくあること。私が日本で勤めていた米系企業もそうでしたし。

「人生で失ったものは2つ。手足となって働いてくれた娘と、ゴテックス」

インタビューを受けながら涙を浮かべて話すマダム。
街で会社のロゴマークを目にすると、泣けてきてしまうと。
育てた会社が今では自分のものではなく、そしてそのデザインの第一線からも退かねばならない・・・。
しかもそれが80歳を過ぎてからの話なんですから、過酷です。

「アフリカ・イスラエル」は、イ国が出来る前に南アフリカ系ユダヤ人の建国投資によって始まり、いまや、国土開発やら不動産部門やらエネルギー関係やら、とにかく手広く広げている巨大グループ。
昨日のニュースでは、イスラエルの「フォックス」というファッション・メーカーもお買い上げになった、と伝えられました。

儲かっている所にはジャンジャン投資して工場も広げたりすると、景気はよくなるし、株式は上がる。
株式が上がれば、物価指数も上がり、国益も上がり、関係ないと思いきや年金・退職金基金も潤っていきますから、そうやってお金は天下をぐるぐると回ります。
お金にもビジネスにも、感傷はないのです。

前述の知人の元デザイナーが、「彼女抜きのゴテックスは、ゴテックスではない」と話してくれたことがあります。
「私が作っていたのは日常に着用するもので、実用性と収益を優先とした商業デザインをしていただけだ。しかし、彼女は違う。水着デザインという完璧な芸術家だ。小さな布地の面積と女性の身体を使って、彼女の芸術が完成する。
 私がデザイン業界から身を引いたのは、50歳を越えて年齢的限界を感じたからだ。ならば、80歳を越えた彼女が、今なお水着デザインが出来るのはなぜか? 彼女が芸術家だからですよ。
 世界の人は、ゴテックスという名前を通して「彼女の芸術作品」を買っていたと言っても過言ではない。
 他の誰かが考えた『彼女のような水着』は、贋作に過ぎない」
アフリカ・イスラエルに買収されて9年。
海外にまで伸びていますから、ゴテックスが没落することはないだろうし、どちらにしろ高齢デザイナーなのだから、いつかはマダムが一線を退かねばならない時期が来ていたことでしょう。
もちろん、これはどの業界だって同じこと。
ちなみに、知人がデザインしていた会社は、没落しました。
彼は、「時代的傾向。C国製には敵わない」と言うけれど、
周囲は、「彼がデザインを辞めたのが大きな要因」と評価しています。

それにしても、88歳でもまだまだ元気だっていうのに、自分が作った会社から追いやられる辛さってのもね…。

インタビュアーが、彼女に最後に聞いた。
 「今は何をしていますか?」
 「新作の水着を考えています」
 「どんなコンセプトで?」
 「ちょっと、ピカソをね・・・。フフフ」

88歳にして、水着にピカソという発想・・・。
やっぱ芸術家だ。


マダム・ゴテックスの年代別コレクションは、こちらのサイトの画面をクリックして入り、「Gottex from the beginning」→「Museum」で鑑賞出来ます。
posted by Heshbonit at 12:00| イ国情緒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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