2010年05月25日

中東式賃上げ法

2日前、とんでもないニュースがイスラエルを流れた。

【法定最低賃金、4600シェケルに。閣議通過】

法定最低賃金は、3850シェケル(≒9万6千円)。
それが、11万5千円になる。約20%アップ。
いきなり上げるのではなく毎月50シェケルを15ヶ月掛けて上げると...。

いやいやそうじゃなくて。方法以前の問題で。
何をどうしたら、ってかどっから、「20%」を持ってこられると??
お金は空から降ってこないよ。生えても来ないよ。

日本人からしたら、なんだその低賃金は?と思うだろうが、イスラエルの給料賃金は非常に低い。平均月給は8千シェケル前後(≒20万円)。
物価は日本よりもずっと高いのに。でもそういう相場の国なのだ。
現在、最低賃金で働いているのは、労働人口の12.5%だという。

提案したのは、この人。アミール・ペレツ議員。
レバノン戦争時の国防相で、国をムチャクチャにした張本人。
元はヒスタドルートという労働組合の代表。ストライキの親分だった。
どさくさに紛れて労働党の党首になり、「仕分けをしよう。国防省はきっと無駄遣いをしているはずだ」と意気込んで国防大臣になったはいいが、何もしないうちに第二次レバノン戦争突入。右も左も分からないため指揮系統が混乱し、酷いものでした。
戦争後、その責任を徹底的に追及され、ちょっとおとなしくしていたと思ったら、いきなりこんなムチャな提案をしてきた。いやはや、どうした、選挙が近いのか?

根拠がないわけではない。
元々この人、「最低賃金は1000米ドルが望ましい」というのが持論だった。
その頃は、1ドルが4.0〜4.5シェケルだったのだけれど、昨年、ドル=3.3シェケルという超底値まで落ち、持ち直したここ最近、ドル=3.7〜3.9シェケル辺で安定している。
ドルが地獄を見た頃なんか、「ほら、ペレツの言う1000ドルよりも、最低賃金のほうが高いじゃん」というジョークがとんだほどだった。

彼の提案は、最低賃金のベースが4600シェケルになるというだけだ。
たとえば、現行で相場相当の月給4600シェケルを貰っている事務員の給料が20%アップするか?といったらそうは言っていない。
とにかく「最低賃金を上げよう」とそういうこと。
ちょっと待て。
「何の職能技能も持たない単純作業しか出来ない人間」と、「一通りのPC操作が出来る事務員」が同じ月給になってしまうのか? それは納得がいかないだろ。
でも、「全国民の給料を20%上げる」とは誰も言っていない。
あくまでも、最低賃金のベースが上がるだけです。自分の給料に納得いかないのでしたら、個々人で雇用主に掛け合って下さい。

さて。いきなりこんなことをしたら世の中がどうなるか?

【問題その1−時短勤務または首切りが始まる】
人件費を抑えるために仕事を詰め込みでやらせた上で労働時間を短縮させる。または、5人雇っているなら1人切ればいい。何を言われようが「仕事がないんだから仕方ないじゃないか」とかなんとか言われてしまえばそこまで。
いくら法律が厳しいとは言っても、労働者が弁護士を雇って会社と戦うほどの力はない。法がどこまで人間を守れるかは誰も分かりません。

【問題その2−求人率が下がる】
1人辞めた? 補充はしないよ。いない人の分まで、がんばって。

【問題その3−生活保護・各種手当・年金が跳ね上がる】
国民保険庁から支払われる手当は、最低賃金がベースなのだから当然。

ならば、どうして閣議を通ってしまったのか?

この【問題その3】がネックだ。
この国で生活保護の恩恵にあずかっているのは、何も貧しくて働けない人や十分なお金がない人だけではない。働かずして国からお金を貰える人達がいる。
現在の与党は、その関係者がとっても多いのだ。

どう考えてもクネセト(国会)を通らないでしょう。無理すぎる。
言わずもがなですが、間違いなく全ての物価が上がるだろうし(便乗値上げ含む)、上で書いたように、今、4〜5千シェケルの月給を貰っている人の反発必須。人件費急騰による給料遅配も有り得るでしょうね。
また、外国人労働者の雇用ベースがこの最低賃金だから(時間外手当は別途付くが、最低賃金X割増で計算する)、それが一気に上がるとしたら、介護などで外国人を雇っている人達が悲鳴を上げる状況になるでしょう。となると、ビザが切れた不法就労者を安く囲うことも増えるだろう。
何よりも、「能力がなくても4600シェケル貰える」となれば、向上心を失う。
そんな簡単に上がるわけ上げられるわけないじゃん。

ま、なんつーの、さすがモロッカイ(モロッコ系)って言うんでしょうか。
中東丸出しのアラブ・イスラム式吹っかけ商法ってやつです。

アラブ・イスラム圏では、初めに法外な金額を吹っかけておいて、そこから甘いお茶飲みながら水タバコ吸いながら、のらりくらりした交渉で下げていって、結局、普通の相場で売るっていうのがあります。
私、大っ嫌いな交渉です。だって、どうせ売る金額が決まっているのに、どうしてバカ高い金額から吹っかけて時間を浪費するのかさっぱり理解できない。
ま、これがこの中東一円の商法なんだから、そういう感覚で育った人にしたら当たり前のことなんでしょう。イスラエルでは、ユダヤ人地域では基本的にこんな交渉で物を買うことはありませんが、アラブ人街に行くとあります。

戻りますがつまり、モロッコ生まれのペレツ議員、初めはバカ高い「2割アップ」とワーっと言っておいて、ここから交渉を始めようっていう魂胆でしょう。
今から2年前に現在の3850シェケルになりましたが、その前の最低賃金は3585シェケル。265シェケル(7.4%)の上げ幅でした。今回もせいぜいその程度になると思われます。それでも結構な額ですけどね。
なんたって「何の職能技能もない人の月給」なんですから。
ちなみに、現行の最低時給は、20.7シェケル(≒520円)。これも日本人からしたら「はぁ?」って感じだろうけれど、この国はこんな相場です。
もう一度書くけど、物価も消費税も日本よりぜんぜん高いです。

 
イスラエルでいい給料を貰える職業は?

間違いなく、ハイテク関連。有り得ないバブル状態。
単純なWEBデザイン・サイト管理・ヘルプデスク程度でも、平均初任給が1万シェケルだそうだ。なんと新米弁護士・会計士の初任給よりも高いっていうんだから、それはもう驚きの世界。
そんなですから、開発関係だったら初年度でも月給2万。それこそ普通の会社の重役レベルの給料が貰える。プロジェクトマネージャーなんていったら、銀行の支店長クラスの給料らしい。
その上、高級車を貸与してもらって私用でも乗り放題、祝週などの休みは長く取れて、社員旅行で派手にあちこち行けて、パラダイスな業界。
問題は、いつまで続くか?ってこと。
世界のどこでもそうだろうけれど、プロジェクト終わったらそこまでだし、移動や引き抜きも多いし、合併吸収も激しいし、よほど専門じゃないと定年も早い。だから、その分だけ給料が高いわけでしょう。
あと、いい給料払っとかないと、国外に出ちゃうからかもしれない。

学校関係者もいい給料貰ってると思う。
基本給はそうでもなくても、等級とか手当とかが基本給を上回る勢いで付くから。そのくせ頻繁にストライキ。これ以上なにがほしいというのだろう。

企業名で言ったら、一大トラストの電気会社。
銀行関係も居座ったら一時期から跳ね上がるそうだ。ま、日本も同じかな。
旅行業界は波があるため、冬場のオフシーズンになると減給や、それこそ何ヶ月間か無給休暇になることもあります。(この無給休暇期間の給料は企業ではなく、国民保険から支給されます)。ただでさえ旅行業というのはどの国でも情勢に左右されやすい、そしてこのイスラエル。なかなか厳しいです。

日本では稼げる水商売、イスラエルではぜんぜんらしい。報道特集なんかでたまにやってますが、なんかよくもまぁあなた達はそんな金額で...って。
それしか手段がなければ仕方ないのかもしれませんが。

ま、あーだこーだ言っても仕方ない。
仕事があるだけ有難いと思えってもんです。

え、経理屋?
イスラエルでは非常〜〜〜に低い。信じられないくらい。
私が田舎の役場勤めだからではなく、全体的にいえることです。
「生産もしなければ営業もしない」という事実もさることながら、「一度決まったらそう簡単に切らない(雇用側)」と、「そう簡単に動かない(被雇用側)」、という需給バランスが絶妙だからでしょうか。

経理なんかどこも同じだし、慣れたら移動するの面倒だし...。どこの経理屋もこうやって、多少の不満を抱きながらも、毎日他人のお金を数え続ける。
                  
posted by Heshbonit at 23:00| 経理のお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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