2009年07月21日

不妊問題とイスラエル

日曜、イスラエル人医師や関係者30人がルーマニアで逮捕された。

罪状は、不法な卵子提供とその治療行為。
ルーマニアに、「イスラエルの病院」が経営され、その中で暗黙の了解による人工授精をしていたそうだ。
1回の治療行為代が(成功しようとしまいと)4000ユーロ。
成功率は50%。飛行機代や滞在費などを支払ったら莫大な負担になる。
調べによると年間3000人以上のイスラエル人女性が海外における卵子提供治療を受けているという。ルーマニア以外に、ウクライナ、キプロス、チェコなどが主な提供元らしい。
しかも昨年の大不況突入以降、提供側が要求する卵子代が跳ね上がり、さらに高くなっているとか。

イスラエルでは、卵子提供を認める法律が2006年に「一応」可決された。
あらゆる治療法に手を尽くしても子供が出来ない人が、卵子提供希望のリストに名を連ねることが出来る。
しかし、法整備が滞っている上、提供数が圧倒的に少ないため待ちきれず、東欧諸国に送り出されるシステムになっているらしい。もちろん、不妊女性が勝手に行くわけではなく、いわば医師達が入念に仕組んだシステムによって、である。
この必要悪が、巧妙なシステムによって「イスラエル保健省認可」とされ、ルーマニアでのクリニックを経営したわけであるが、ルーマニア当局からしたら、法的合意が成されない状態での卵子提供病院であるため、今回の逮捕となったわけだ。

イスラエル国内において卵子提供者が少ない理由は簡単。
精子バンクに比べて有名でなく、提供がそう簡単でないから。
特に、妊娠を望んでいないイスラエル人女性の大半がピルを服用しているため、「卵子を提供するためにピルを止めよう」なんていう女性はそういない。
そして、もうひとつ。イスラエルでは、女性による不妊女性への蔑視が非常に厳しく、「なんで私の卵を、子供が産めない女にあげなくちゃいけないのよ」という考えが根強いからともいえるだろう。

子供に一切興味がない私にしたら、「何をそんなに子供子供と...」としか思えないのだが、どうしても産みたい・産まなければならない脅迫状態にいる人にしたら、問題は切実。
面識があるだけでも、精子バンクで提供を受けたシングルマザーが3人いる。そこまでして子供が欲しい理由は私にはサッパリ分からない。
単なる自己満足・自己顕示であるとしか思えない。どう考えても。


話を不妊に戻しますが、不妊ってそんなに悪いことじゃないのに、なぜか「産めない女」に対しては、世間の風当たりが強い。異常なまでに強い。

【女性として生まれたから産めて当たり前】 ...なわけがないんですよ。

世の中、目が悪い人がいて、胃が悪い人や腸が弱い人がいる。
それと同じで、婦人科系の器官が弱い人や機能不全の人がいて当然なんです。
どうしてあなたはメガネなしで新聞を読めないんですか? 
何が理由で年中胃が悪くて医者通いなんですか? 
同じ物を食べているのに、どうしてあなただけが下痢なんですか? 
先天性か後天性か外因性か内因性か分からないけれど、とにかくそういう体なんだから仕方ないし、視力や胃や腸が悪い理由なんて解明しきれない。
理由が分かったところで治療方法があるかどうか。そしてたとえ治療方法があってその時は治ったとしても、一生涯絶対にリバウンドしない保障もない。
日常生活に著しく影響をきたすわけでもなければ、自分でコントロールしながら上手く付き合っていくしかない。そういうことでしょう?

ところがなぜか、「子供が出来にくい女性」となると、途端に偏見で見て、まるで「人間としての存在価値がない」というような扱いになるのか、完全に差別だ。
裸眼ではほとんど見えない弱視の人に向かって、「どうしてあなた、そんなに目が悪いの?」って言う人います? 目が見えない人に、「なんで見えないの? 治療方法ないの? 将来どうする気?」って大人が言ったら裁判沙汰ですよ。

あと、不妊体質だからといって、「私って産めなくて可哀想なの...」「子供の話は私の前でしないでっ! 無神経ねっ!」と自己愛に浸る人も理解できない。
「不妊体質で子供が出来にくい? へー、そうなんだ。私、胃潰瘍なんだ」
...え? だって、そういうことでしょ? っつーか、胃潰瘍のほうが大変よ。毎日の食事に影響するんだから。卵巣や子宮の不具合なら、筋腫や腫瘍でもない限り毎日の生活には何も影響ないでしょ。
“百発百中のガハハ女”が高飛車に出るからか、“出来なくて可哀想でしょヨヨヨな勘違い女”が多いからか。
こうして、産める女vs産めない女のギャップがどんどん開いて行く気がする。

それにしても、次世代に絶対に残すべき立派な遺伝子なんでしょうね。
すごい美人、すごい頭がいい、皆さん、自信がおありでうらやましいです。
私はこんなブスでバカな劣性遺伝子の塊を絶対に残しません。


ユダヤ教においては、人工授精に関しての見解がいくつかある。
ユダヤ教の教義によれば、ユダヤ人とは「母親がユダヤ教徒」であることが重要であり、父親がユダヤ教徒である必要はない。
2000年以上前、まさか卵子提供だの精子バンクだのといったものが将来的に出来るなんて思いもしなかっただろうから、卵子に関しての記述は聖書のどこを探してもなく、現代テクノロジーに関する解釈はまちまちである。

厳格なラビは、人工授精を絶対に認めない。それよりも少し緩いラビは、「ユダヤ教徒の卵子で、試験管結合でなければよい」と言い、別のラビは、「精子の出自が本当にその父親であることも大事」と言い、また別の見解では、「卵が違っても母胎がユダヤ教徒なら」と言い、さらに別のラビは、「改宗さえすればよい」という。


イスラエルの女性議員が中心となって、この問題を解決すべく法規制を訴えているが、最終決議段階において止まっている。
阻むのは、宗教と、倫理。
宗教は別問題としても、倫理問題は日本も同じ。
他人から提供を受けた受精卵がどうなるか未知数だ。
卵子が育たないには何らかの理由があるのだから、卵子が出来ない女性の子宮に受精卵を入れて、本当に最後まできちんと育ち、健常な子供が生まれるかどうか、誰も分からない。
そういうリスクを全て理解してまで生みたいのか、私には分からない。

「産むことだけが女性の存在理由」というのが、イスラエル。
この国では、子供は授かりものではなく、競って作るもの。
それこそ、障害者だろうが何だろうが(医者が事前にそれを分かって中絶を勧めても...)、無理矢理にでも子供を産みさえすればいい。
そうすれば、「とりあえず女としての役割は果たせた」と自己満足に浸れる。周りにそのことで悪口影口を言われることもない。

・・・育ててなんぼ、なんですけどね。

ひらめき 関連記事:中絶問題@イスラエル
           
posted by Heshbonit at 20:00| イ国のニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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