2008年09月30日

ザクロとグラナダとユダヤ人

ザクロ(石榴・柘榴)は、ユダヤ新年の象徴的な果物です。
ザクロの原産はイラン。
ヘブライ語では、リモン(Rimon)といいます。姉妹語のアラビア語では、ルマーン。
語源は、古代エジプト語のRMN(現代解読法では、Remen)。

古代の地中海エリアに君臨していたフェニキア人が、古代ローマにもたらしたため、「フェニキアのリンゴ(Malum Punicum)」、または、「種だらけのリンゴ(Malum Granatum)」と呼ばれました。
その2つの名前が混ざったものが現在のザクロの学名、「フェニキア種だらけ(Punica Granatum)」となるのです。これ間違いだろうに・・・。
ちなみに、英語「Pomegranate」や、イタリア語の「Melograno」、ドイツ語の「Granatapfel」などには、「種だらけのリンゴ」が正しく訳されました。

さて、スペイン語では、「種のリンゴ」の「種(Granatum)」だけが残り、「グラナダ」と呼ばれています。
はい。あの地名の「グラナダ」です。

それでは時代がぐいーっと遡り、7世紀頃。
現在の「グラナダ」の中心地に、「ユダヤのガルナタ(Garnata al-Yahud。アラビア語)」と呼ばれたユダヤ人居住地があったそうで、現在の「グラナダ」の源はそれではないかと言われています。
アラビア語で「ユダヤ人のガルナタ」と呼ばれていたということは、他にもガルナタという場所があったか、もしくは、元からグラナダ(ガルナタ)と呼ばれていたか、のどちらかと思われます。
「ガルナタ」に住んでいたユダヤ人は、常にキリスト教徒に圧迫された生活をしていました。そこで、8世紀初頭、アフリカ大陸から北上してきたイスラム王朝勢力側に付いて、彼らを支援することに。

本などでは「ざくろが語源」と書かれていますが、私は「ガルナタ」が「ざくろの生る町」という意味で付けられていたとは思えません。
どの国でもそうですが、昔はその土地の特徴や征服者の名前が地名になるのが一般的でしたから、「ざくろが...」というのは後世に伝説化した(こじつけた)と考えるほうが自然です。
「ガルナタ」は、アラビア語の単語でもイスラム教徒の名前でもありませんから、イスラム勢力がここに到達する前から「グラナダ」と呼ばれていたのでしょう。
そして、母音を表記しないアラビア語発音で訛りが生じ、イスラム支配下で「ガルナタ」と呼ばれたのではないでしょうか。蛇足ですが、ユダヤ教に「家の周りにザクロを植える」なんていう規則も風習もありませんから、「スペイン中、このユダヤ人の街にだけザクロがたくさんあった」ということも有り得ないはずです。
私の勝手な憶測ですが、スペイン各所に多く見られる「花崗岩(グラニート。英:Granite。語源は、Granatumと同じ)」が由来ではないかと思います。

こうして、イスラム勢力による「グラナダ王国」が完成。
あの有名なアルハンブラ宮殿も建造されます。
こちらも「赤の城砦」ですが、ザクロの赤ではありません。

当時のイスラム王朝は、全住民の信教の自由を認めたため、この地に住むユダヤ人は安心して生活が出来ました。おかげで、このグラナダを中心として「スペインにおけるユダヤ教の黄金期」を迎えます。
しかし、1492年のグラナダ陥落後、レコンキスタの終焉を迎えたこの地では、スペイン連合王国の異端審問が猛威を奮います。
ユダヤ人は土地を追われ、改宗を迫られました。ある者は抵抗して命を落とし、ある者は改宗して豚と罵られます。そして、海を渡るものは北アフリカ・南米へ、陸伝いに東欧・バルカン半島・トルコへと、再び放浪するのでありました。

というわけで、相変わらず話が全然関係ない方向に行きましたので、肝心の「なぜユダヤ人がザクロを?」っていうところに戻します。

理由の1つは、中にある種のような果肉が約600個あり(ホントか?)、これと『ユダヤ教の613の戒律』とを引っ掛けているという理由。
ザクロのしっぽ
さらにもう1つは、基本的にザクロの花びらは6枚あり、それが実となった時にちょうどダヴィドスター(六角星)のような形になるから、と。

そんなわけで、ユダヤの新年はザクロで祝う、ということになっています。
ザクロ型ペンダントトップ
いわばザクロはユダヤ人を象徴する果物といっても過言ではなく、ザクロを象った燭台や玄関の飾り、ペンダントトップなどもあります。

イベリア半島を追われたユダヤ人が、メディチ家保護下のイタリアの自由都市リヴォルノに逃がれ、その時にトマトをもたらした話は以前書きましたが、今、ここまで書いて、もしかしたら、
「このトマトっつーのはよ、ザクロと同じようなもんではねえのが? 中にぷちぷちあるし、なぁ、ちっと食ってみっか、お?」
・・・ってことで食べてみたのかも、とふと気が付いた。

もう1つ。英語で「Grenade」と言ったら、手榴弾。
ヘブ語でも、ザクロと同じ「リモン」です。
中の種(火薬)が、投げたら飛び散ることから形容されたようです。

 
posted by Heshbonit at 19:00| イ国の言葉 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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